ブラック・ジャック創作(秘)話~手塚治虫の仕事場から~ 2
(少年チャンピオン・コミックスエクストラ)
毎回手塚治虫の異常な天才性が語られるこのマンガだけど、今回は手塚治虫のわがままがいっぱい詰まった1冊。
東京の鉛筆じゃないと描けないと言い出したり、冬にすいかが食べたいと言ったり、社員の持っているおもちゃをほしがったり。
しかしそういうわがままを言われた人たちは「大変だった」と言いつつどこかうれしげな、そして誇らしげな顔をする。
私が好きなエピソードは、採用されたけど絵が描けず虫プロでアニメの進行になった人の話。
アニメの進行というのはマンガで言えば編集の原稿取りの部分。期日までに絵を上げさせなければいけない、ある意味一番きつい仕事。そして誰の絵をとるのが一番大変だったかと言うとやはり手塚治虫。
その人が虫プロをやめて劇団を作ったとき、なかなかうまくいかなくて廃品回収の仕事を始める。窮状を聞いた虫プロ社員たちは、彼を呼んでたくさんの廃品をくれる。そして手塚治虫は毎月現金を送ってくれるようになる。
しかし、そんな援助を受けながらも劇団は失敗、本人は肺病になり入院する。その彼がよろよろとした足取りで手塚治虫に電話をするために出かける。
電話の内容はーーー
「入院したのでお金をください」ではなく「劇団も順調です、夢を叶えたのでもうお金はいりません」
泣けた。
人はどこまでも墜ちることができるものだ、しかしその目の前にがんばり続ける存在があるなら、その人に恥じないことだけが最後の支えになるのではないだろうか?

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